敵の間細をして荷馱を運ばしむ
參禮の前後より、二個の韓人の一行に隨伴し來る者あり、衆其必ず間細なるべきを
察し、而して勇者は試みに之を糾問せんことを主張す、長者之を許さずして曰ふ、今
や運搬人夫不足の折なり、間細を鞭打せんよりは若かじ之をして牛馬の代理を務
めしめんにはと。衆手を拍つて其妙計なるを稱し、乃ち特に拾貫目餘の重荷を間
者の背上に負し、一行前後より之を護衛して日光直射、炎炎たる烈日の下を輕驅せ
せしむ、間者唯唯として其命を奉ずれども、頰邊の落淚は額上の流汗よりも滋し