一大英斷勅使を斬らんとす
策あり、策あり、勅使を斬るの猛斷是れなり、是れ啻に黨官の兩軍に對して、靑天の霹
靂たるのみならず、又當に數萬の黨軍を驅つて、背水の地位に立たしむべきの奇策
たり、旣に一たび勅使を屠戮し去らん乎、是れ京軍に對して極端の絶意を示すもの
なり、旣に絶意を示すに及べば、黨人最後の決心亦自ら定まらざるを得ざるべし、局
面於是急轉し、形勢於是一變す、黨人の擇ぶ所は就死乎否則得自由乎の二途を餘す
に過ぎざるのみ、天下の事、爾後復た些の瞹眛、些の遲疑を許さず、神算且つ斯の如し、
天祐俠豈に小不仁を行ふを恐れて他の流星光底逸長蛇を徒視するに忍びんや、十
四個英雄の謀議爰に一決する所あり、吉倉、武田、日下は先づ其動靜を探らんが爲め
に薄暮相伴ふて密かに勅使營を敲かんとす