衆心倦怠復た戰を說かず
勅命に對する全總督の意思旣に彼の如し、去らぬだに、數月の苦戰に倦心を生じた
る黨人輩今や利益多き媾和條件を得て、如何んぞ爰に休戰令を發せざらん、十四個
の天佑俠徒が苦諫極諍も、事是に至つては復た頹勢を挽回するに由なき也、眼を轉
じて軍國の形勢を見れば、全李兩將旣に兩道より全州に肉薄して、旌幟山河を蓋ひ、
湖南一道。兵火を見ずして一帶に我に靡くが如く、湖西五十州、亦次第に黨軍の號令
に動かされんとするに方り、京軍は意氣頓に挫折して復た南進の勇なく、觀察使營
の士心、戰戰恟恟として、頃來頻りに孤城重圍に陷るの歎を漏らすあり、君側掃蕩生
民救護の志を行ふ、豈に之より好機あらんや、然るに總督空く宋襄の仁を懷き、陣中
專ら一時の偸安を思ふ、實に千載の遺憾と謂ふ可し、天佑俠たる者、其初志に乖かざ
らんと欲せば、此際何等か、旋乾轉坤的の妙策を案出し、以て時局の展開に力むる所
なかるべからず