八道第一の飮料水
午餐旣に終り、輕裝して復た山路を攀ぢ登らんとす、道傍の叢中、草莓極めて多し、行
行之を摘んで其酸液を味ふ、漸くにして全羅慶尙の分界標に至る、一行氣息喘喘焉
渴を訴ふるもの鮮なからず、絶頂に一巨樹あり、一淸泉其樹下より湧出す、衆乃ち此
泉に就て喉を潤ほす、水頗る冷なり、衆皆絶叫して曰く、八道第一の好飮料水、惜らく
は提へて去るべからず、乞ふ胃府の破裂せざる限りは共に與に鯨飮を恣にせんと
各各掬一掬、飮一飮、其量一升より少きは莫し。坂路之より下傾、輕驅して過ぐ可し、
黃昏終に雲峰城下に達す